過去記事では筋肉繊維が増えることで、筋力アップになるという構造的な話でした。
記事の通り、筋肉繊維の変化には8〜12週と時間がかかります。
本記事で紹介する神経的変化は、トレーニング初期に顕著に見られます。
筋肉は脳から出る電気信号を神経を介して受け取り、動きます。
筋肉の大きさが変わらなくても、この電気信号の通りや量を強化することでも、発揮できるパワーが上がります。
そのメカニズムを紹介していきます。
脳の興奮性の強化
筋肉の中には筋繊維の束が詰まっており、普段は100%使いきれていません。いざという時のために温存されています。

「火事場の馬鹿力」という言葉がありますが、
ヒトは窮地に追い込まれることで、普段からは考えられないパワーを発揮することがあります。
この「火事場の馬鹿力」は危機的状況に追い込まれることで、脳がフル活動することにより起こるといわれています。
「大脳→神経→筋肉」の回路を回すことで、筋肉への電気刺激の量を増やしたり、同じ刺激量でも反応する筋繊維を増やすことができます。使っていない筋肉を有効活用することになります。
筋力トレーニングによって回路を回すことができますが、かけ声などで脳にはたらきかけをすることでも同じ現象がおこります。
スキルによる変化
トレーニングの原理の中で特異性の原理がありました。
動きのパフォーマンスを向上させるなら、同じ種類の運動をした方がよいというものです。(詳細はリンクからどうぞ)
神経的にも同様のことがいえます。
どんなに単純な動きでも人それぞれ姿勢やフォームにくせがあります。
ボールを投げるというパフォーマンスに対して、何度か投げる練習をしたとしましょう。

投げる前の構えや曲げるフォームのアドバイスをもらうだけで、飛距離が伸びる可能性があります。
筋肉が増えたのではなく、筋肉の使い方=スキルが向上したからです。
過去の学術研究でも、動きを伴う筋力の方が、筋力測定でみる等尺性収縮の筋力よりも増加の幅が大きいことがわかっています。
クロスオーバーの効果
右側の筋トレをすると、左側の手足の筋力にもよい影響を与えます。
過去記事「インナーマッスルって?」でも取り上げましたが、腕1本を動かすにも体幹や足の踏ん張りなど総合的に筋肉を使います。
スキルによる変化にもあったように姿勢やフォームが変わることで、同一の筋トレをしても周辺の筋力強化の可能性はおこりえます。
イメージトレーニング
筋の動きをイメージするだけでも筋肉にはよい影響を与えます。
スポーツ経験にも関係があります。
例えば、バスケット経験者と非経験者が同じバスケットの試合を見たとしましょう。

バスケット経験者は選手のプレーを見るだけで、選手の動きと同じ筋肉が反応します。非経験者ではそれが見られません。
両者の差はイメージができるかどうか。イメージできることの重要さがわかりますね。
イメージだけで筋力アップができるとは思いません。しかし、
筋トレする時に
自分がどんな風に動いているのか?
どこに力が入っているのか?
をイメージすることでより効果的に筋トレできることは間違い無いでしょう。
拮抗筋の抑制
カラダを動かす時には、加速と減速を同時にはたらかせて調整をしています。加速に使う筋を主動作筋、減速に使う筋を拮抗筋と呼びます。
椅子から立つ時には、膝を伸ばす大腿四頭筋が主動作筋、膝を曲げるハムストリングスが拮抗筋となります。
(主動作筋)ー(拮抗筋)=(動作) となります。
拮抗筋はカラダを傷めないようにするためや、動きを繊細に調整できるために働いています。
筋トレをすることでこの拮抗筋の活動を抑えることができます。
(主動作筋)ー(拮抗筋)=(動作) となり、
主動作筋のパワーが上がっていなくても相対的に強い動作ができるようになります。
まとめ
筋トレの初期では神経的な要素が大きく現れます。だいたい2週間から1ヶ月くらい。
姿勢やフォームの変化、神経回路から筋収縮までの効率化が期待できます。
神経的な筋力アップは、運動をやめることであっという間に元に戻ってしまいます。
筋トレは2ヶ月、3ヶ月と続けることで本物の筋肉を手に入れることができます。長期間継続することが筋トレを成功させる秘訣といえます。
まずは少しの運動でもよいので、持続できる筋トレを行いましょう。

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